高効率水素エネルギーシステム

スラッシュ水素を利用した高効率水素エネルギーシステム

会社方針


 スラッシュ水素は燃料電池や宇宙ロケットの燃料、高温超伝導機器の冷媒として、その利用が期待されています。燃料電池の飛躍的な普及および情報技術普及による電力需要増加、温室効果ガスの排出削減に鑑み [1, 2]*、上図に示すスラッシュ水素を利用した独創的な高効率水素エネルギーシステムを提案している[3-7]。

 水素をスラッシュ水素の形態で長距離パイプライン輸送する際、金属系高温超電導材 MgB2(二ホウ化マグネシウム、超伝導転位温度 -234℃、絶対温度 39 K)を用いた高温超伝導送電と組み合せ、輸送先においてはスラッシュ水素(-259℃、絶対温度 14 K)もしくは液体水素(-253℃、絶対温度 20 K)を冷媒とする高温超伝導電力貯蔵(SMES: Superconducting Magnetic Energy Storage)を組み合せると、水素燃料と電力の同時輸送および同時貯蔵が可能となる。いわゆる、シナジー効果が期待できる(システム図参照)。

 高効率水素エネルギーシステムの実用化を進めるため、次のような研究開発、下図に示す技術開発を実施してきた。

  • 水素の凝縮・液化熱伝達率が Nusselt 層流理論式と一致することを世界で初めて実証した研究 [8-10]。

  • 世界初の磁気冷凍による高効率水素液化の実証研究 [11, 12]。(下記 Web site)

  • オーガ法によるスラッシュ水素大量製造技術の開発 [13, 14, 38]。

  • 固体水素粒子の挙動を考慮した独創的な構造をもつスラッシュ水素およびスラッシュ窒素用高精度密度計(固相率計)、流量計の開発 [15-19, 24] 。
    密度計の測定精度は密度換算でスラッシュ水素 0.5%、スラッシュ窒素 0.25% [15, 16, 19, 24]。

  • スラッシュ窒素が管内流動時に、液体窒素と比較した圧力損失低減と伝熱劣化が同時に発生する「レイノルズのアナロジー」(Reynolds' analogy) が成立することを世界で初めて実証し、そのメカニズムを解明した研究(2011年)。
    スラッシュ窒素が円管、正方形管、三角形管、収縮・拡大管、コルゲート管、エルボー管を流動する際に発生する圧力損失低減、熱伝達劣化メカニズムの研究 [20-24, 28, 29] 。
    スラッシュ水素、スラッシュ窒素の圧力損失低減、伝熱劣化現象および固体粒子の挙動を解明する三次元流動解析プログラム(SLUSH-3D)を独自に開発 [25-27] 。

  • 高温超伝導電力貯蔵の冷媒を目的とした液体水素、スラッシュ水素、スラッシュ窒素のプール核沸騰熱伝達の研究 [30, 31]。

 *[ ]内は参考文献の文献番号を示す。

代表メッセージ

 ヨーロッパ、米国、アジアでは、水素エネルギー社会の実現を目指し、家庭用燃料電池、燃料電池自動車およびそのインフラとして重要な水素ステーションの本格的な普及拡大に取り組んでいます。日本では2009年に世界に先駆けて家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(ENE-FARM)の販売が開始されました。また、2014年には燃料電池自動車(TOYOTA MIRAI)の一般販売が開始され、本格的な普及が進められています。
 このような動向を鑑み、液体水素、特にスラッシュ水素の利用を加速し、水素エネルギー、電気エネルギーを高効率に輸送、貯蔵できる独創的な水素エネルギーシステムの早期実用化をスラッシュ水素研究所は進めています。