コルゲート管内流動、PIV

コルゲート管の圧力損失低減と固体窒素粒子の流動挙動

技術情報1


 コルゲート管の圧力損失に関する研究は、これまで多くの研究者によって報告されている。しかしながら、その多くは水や空気などの常温単相流体を対象に行われている。また、使用するコルゲート管の長さが従来短いこともあり、その圧力損失は経験上、平滑直管の3~4倍の長さに相当するとして設計に使用されてきた。

 極低温時の配管収縮を吸収するコルゲート管は極低温機器の配管には必要不可欠な管路要素であるが、配管類の圧力損失が増加するため輸送用ポンプの所要動力増加、システムの性能低下を招くことになる。例えば、ステンレス鋼の場合、室温から極低温(温度 77 K 以下)まで冷却されると長さ1 mの配管が約 3 mm 収縮する。その結果、配管、機器に大きな応力が働き、破壊に至る恐れがある。長距離輸送配管の場合、使用するコルゲート管の合計長さも増加するため、圧力損失特性は重要となる。

 内径 d = 12 mm(A)、15 mm(B) の2種類のアニュラー型(スパイラル型ではない)コルゲート管をスラッシュ窒素が流動する際の流速と圧力損失測定結果を上図に示す [28]。液体窒素の測定値とその最小自乗近似曲線、プラントル‐カルマン式、ホーソン式(A: λ = 0.151,B: λ = 0.120)も示す。ホーソンらは,常温の水および空気についてコルゲート管の圧力損失式を報告している [34]。コルゲート管 A、B の液体窒素の圧力損失は同一流速において、各々プラントル‐カルマン式の 5-9、3-6倍となった。ホーソン式より計算した液体窒素の圧力損失は実験値よりも全て大きな値を示した。スラッシュ窒素の圧力損失はコルゲート管 A、B のいずれの場合においても、2 m/s 以下の低流速域では液体窒素と同程度もしくはやや大きい値を示し、2 m/s 以上で圧力損失低減が現われ、固相率が大きくなると低減量は大きくなる。本実験で得られた圧力損失低減量(%)の最大値と固相率は、コルゲート管 Aで37%(30 wt.%)、コルゲート管 Bで31%(27 wt.%)である。

 スラッシュ窒素の管摩擦係数 λRe数 の実験結果を下図に示す [28]。図には各固相率の範囲 10-15、15-25 wt.%で得られた実験値の最小自乗近似曲線を破線(A)と実線(B)で示す。参考までに、液体で使用されるホーソン式(A: λ = 0.151、B: λ = 0.120)も示した(ホーソン式は上図からもわかるように、液体の管摩擦係数を大きく見積もる傾向がある)。いずれのコルゲート管もスラッシュ窒素の管摩擦係数はほぼ一定値を示し、低固相率(10-15 wt.%)と高固相率(15-35 wt.%)では明確な違いが見られ、固相率が大きいほど管摩擦係数は小さくなる特徴がある。

 圧力損失低減メカニズム解明のため、コルゲート管を模擬した透明な溝付管(16 mm×12 mm、溝深さ 2 mm)を使用してスラッシュ窒素固体粒子の挙動を可視化観察した [28]。
 圧力損失低減が発生しない場合と発生する場合にPIV法*で測定した固体窒素粒子の流跡線を下図に示す。圧力損失低減が発生しない場合は、溝内部に固体粒子の渦状の流跡線が確認されたが、圧力損失低減が発生する場合は溝内部に渦状の流跡線が確認されなかった。可視化観察結果から、液体が溝内部で渦(再循環)を発生すると共に固体粒子が溝内部に取り込まれ、その結果、液体と固体粒子が運動エネルギーを損失し、圧力損失が増加している。
 平滑円管の項で述べたように、流速の増加に伴い、固体粒子が管中央部に移動する結果、コルゲート付近に固体粒子の少ない液体層が存在し、コルゲート部と固体粒子の干渉が減少する。さらに、管中央部を流動する固体粒子群がコルゲート付近およびコルゲート内部に存在する液体の乱流もしくは渦の発達と管中央部への乱流拡散を抑制し、液体と固体粒子の運動エネルギー損失を低減していることが考えられる。

 * PIV法:粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry)を使用して、固体粒子の流速、流跡線を直接測定した。